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夫婦で不動産を売却する手続きとは?流れや注意点をわかりやすく解説

夫婦で築いた大切な不動産も、離婚やライフスタイルの変化によって「売却」を考える場面が訪れることがあります。しかし、どのような流れで手続きを進めればよいのか、同意や名義、財産分与など複雑な疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。本記事では、夫婦間の不動産売却にまつわる基本的な考え方や、円滑に手続きを進めるための注意点を丁寧に分かりやすく解説します。安心して次の一歩を踏み出すための知識を身につけましょう。

夫婦で共有財産としての不動産売却の基本的な考え方

ご夫婦で築いた不動産は、名義にかかわらず共有財産として財産分与の対象になります。まず不動産の共有持分がどのように設定されているか、登記簿謄本などで確認をしましょう。「出資割合に応じて持分割合が決まる」という仕組みが一般的です(夫婦それぞれの出資額で持分が設定されます)。

共有名義の場合には、売却には共有者全員の同意が必要です。たとえご自身に持分があっても、物件全体を売りたいときにはお二人で協力して売却手続きを進めなければなりません。その一方で、ご自身の持分だけを第三者に売却することは可能です。ただし、市場では流通性が低く、専門業者での取り扱いが中心である点には注意が必要です。

離婚時に不動産を売却する流れとしては、まずご夫婦でしっかり話し合い、合意形成を図ることが基本です。その後、離婚協議書や財産分与の内容をまとめた書面化(調停調書や協議離婚の合意書など)が必要になります。これらの文書をもとに、登記や売却手続きを進めていきます。特に財産分与による名義変更や売却では、手続きの複雑さや税務の要件を踏まえた対応が求められます。

以下の表は、共有・単独名義の場合に必要となる同意や手続きの違いを整理したものです。

名義の形態 全体売却の同意 自身の持分のみ売却
共有名義 双方の同意が必要 可能だが市場性は低い
単独名義 本人の判断で売却可能

売却のタイミング—離婚前と離婚後、それぞれのメリット・デメリット

離婚を見据えた不動産の売却タイミングには、「離婚前」と「離婚後」の二つの選択肢があります。それぞれに特徴があり、ご夫婦の状況に応じた判断が求められます。以下の表に主なメリット・デメリットを整理しました。

タイミング メリット 注意すべき点・デメリット
離婚前 ・売却代金が現金化され、財産分与が明確にできる
・離婚後のトラブルを回避しやすい
・一定の税制上の特例が使える可能性がある
・売却期間が長引くと離婚手続きが進みにくくなる
・精神的な負担を抱えたまま売却価格を決断しなければならない可能性
離婚後 ・冷静に売却活動に集中でき、高値で売れる可能性がある
・贈与税が課されない(財産分与扱いになる)ため税面で有利な場合がある
・元配偶者との連絡が困難になると売却が進みにくい
・名義変更がない場合、同意が得られずトラブルとなる可能性

まず「離婚前に売却」する場合、現金化した資金を財産分与に用いることで分配がスムーズになります。売却代金からローンを完済し、残額を分け合うことで公平性を確保しやすくなりますし、その後の連絡の煩わしさも軽減できます。場合によっては、所有期間が長い不動産には税制上の優遇措置が適用され、税負担の軽減につながることもあります。ただし、不動産の売却には通常三~六か月以上かかることも多く、手続きが長期化すると離婚協議が滞るおそれがあります。また、感情的に不安定な時期に売却価格を決めることへの負担も無視できません。さらに、離婚前に代金を分けてしまうと贈与とみなされ、贈与税が課される可能性がありますので注意が必要です(離婚後に分与すれば原則非課税となります)。

一方、「離婚後に売却」する場合は、気持ちが整理され冷静に売却活動を進められるため、高値成約が期待できます。税制面でも、贈与税がかからず財産分与として扱われる点は大きなメリットです。ただし、離婚後は元配偶者との連絡が難しくなることも多く、売却に必要な書類や同意が得られず、手続きが停滞するリスクがあります。特に共有名義の場合は、一方の同意なしには売却ができないことがありますので、注意が必要です。

以上、ご夫婦の精神状況や時間的余裕、税負担への配慮などを総合的に検討し、最適なタイミングを選択されることをおすすめいたします。

売却手続きのステップと準備しておくべき事項

離婚やライフスタイルの変化など、ご夫婦で不動産売却を検討する際は、準備と手続きを段階的に進めることが重要です。以下のステップに沿って進めると、安全でスムーズに進行できます。

複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な市場相場を把握しておくことが大切です。
ステップ主な内容ポイント
ステップ1住宅ローンの残高確認金融機関の「残高証明書」や「返済予定表」で、売却後の資金計画を明確にします。
ステップ2不動産査定依頼
ステップ3媒介契約から売買契約、決済・引き渡し媒介契約締結後に売却活動を開始し、買主との交渉がまとまったら売買契約、そして決済・引き渡しへと進みます。
ステップ4売却できない場合の選択肢買取や任意売却の活用など、万が一の際の対策も事前に検討しておきます。

まず、最初に確認すべきは住宅ローンの残高です。これは金融機関から発行される「残高証明書」や「返済予定表」を使って把握できます。売却後にどれだけ手元に残るか(アンダーローンかオーバーローンか)を知ることが重要です。そのうえで査定依頼を行い、相場感を理解することがスムーズな売却につながります。具体的には、複数の不動産会社への査定依頼が推奨されています 。

次に媒介契約を結び、売却活動を開始します。買い手が見つかれば価格や引き渡し時期などの条件を交渉し、「売買契約」を締結します。手付金の受領や契約内容の確認が重要です。その後、決済・引き渡しの際には司法書士の立ち会いのもと、ローン完済と所有権移転登記を同時に行い、取引を終了させます 。

さらに、万一売却が難しい場合を見越して、不動産買取や任意売却といった選択肢を事前に検討しておくことも安心です。このような対策により、不測の事態にも柔軟に対応できる準備が整います 。

財産分与としての売却益の取り扱いと平等な分配のためのポイント

不動産を売却した際の利益(売却益)については、売却によって得た金額から、売却にかかる費用や住宅ローンの残債を差し引いた純利益が、財産分与の対象となります。つまり、売却益=売却代金-売却費用(仲介手数料など)-ローン残債という形で整理されます。このようにすることで、実際に得られる金銭を正確に把握できます。さらに、売却費用には、仲介手数料のほか、登記費用や印紙税などの諸費用も含まれる点にご注意ください。

財産分与の標準的な配分は「2分の1ずつ」ですが、頭金の負担や家事や育児などの貢献度(寄与分)に応じて調整することも可能です。たとえば、頭金を多く支払われた方や家事・子育ての面でより貢献された方には、その分を考慮して分配割合を見直すケースもあります。こうした調整は夫婦間の話し合いに基づきますが、より公正な判断として専門家の意見を取り入れることも有効です。

合意した内容は、離婚協議書や財産分与の合意書として書面化し、公証役場で公正証書化することを強くおすすめします。公正証書化することで、後日に支払いが滞った場合でも、裁判を経ずに強制執行が可能となるため、トラブル回避に非常に役立ちます。不動産に関する内容を含めて確定的な形で残すためにも、公正証書の利用は重要です。

項目概要備考
売却益の算出売却代金-売却費用-ローン残債諸費用も漏れなく算入
分配の基本割合2分の1ずつ標準的な原則
寄与度による調整頭金・家事労働などに応じた変更夫婦の合意次第で調整可能

まとめ

夫婦で不動産の売却を検討する際は、名義や現状にとらわれず、財産分与や同意の取り方、売却のタイミングの違いを理解することが大切です。売却手続きを円滑に進めるためには、事前の準備とステップごとの確認が欠かせません。また、売却益の分配方法や書面化の重要性も押さえておくことで、後々のトラブルを防ぐことができます。不安な点や分からないことがあれば、専門家に相談しながら一つずつ進めていきましょう。

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